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リトル・トリーという本はどうとらえるべきか?

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日本ではめるくまーるから出版されているアメリカ先住民の少年の話を書いた「リトル・トリー」フォレスト・カーター著という本があります。初版は1991年11月なのでもう30年前ですね。

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私が初めて読んだのは1999年頃。その時は感動しましたし良い本だと思いました。しかし直後に作者のフォレスト・カーターは実は白人至上主義者でクークラックスクラン(KKK)のメンバーだという噂を聞きました。あまりに本の内容とその噂が乖離し過ぎていて信じ難いというか、本の内容まで否定しまうのは残念だという思いもあり、そこは深堀せずにいました。

 

そして去年からのコロナ渦、ステイホームで所有している本を色々と読み返していたのですが、いよいよというか20数年ぶりにリトル・トリーを手に取り読み直してみたのです。読み始めるまでちょっと躊躇してましたけどね。

 

そして改めて読み返してみて思ったのは、20数年前とは感じ方は違うけれど、俺は好きな部分も沢山ある本だと思いました。「はだしの女の子」、「夢と土くれ」、そして「ウィロー・ジョン」からのラストまでは読む価値があると。

 

確かにアメリカ先住民をステレオタイプ的に書いているような、色んな逸話を寄せ集めたような部分もありますけど、この本が書かれた当時(60~70年代前後)の社会状況を考えると、アメリカ先住民に対する認識や扱いなんて相当酷い状況です。暇な白人が遊びで先住民をなぶり殺すような事件も田舎では珍しくなかった。そんな状況を変える為に「AIM(アメリカ・インディアン・ムーブメント)」という先住民復権運動が発生した訳です。ちなみに創設メンバーのデニス・バンクスさんにお会いした事があります。

 

そんな今とは違う社会情勢の中、自然と共に生きる事の素晴らしさ、年配者を尊敬する事、政治家や役人、金持ちの白人、クリスチャンは嘘つきだと書いた事、それだけでも面白いと思うのです。

 

ではフォレスト・カーターが人種差別主義だったとして、何故こんな本を書いたのだろうか?そこは色んな議論があるようですが、人間の二面性、贖罪、謝罪、ストーリーでっち上げによる単なる金儲け?それはわかりませんが、一つ思うのは、人種差別というのは基本的には無知から来るものだと思います。逆に言えばその無知が改善されてしまうとコロッと差別主義者から脱却してしまう。

 

これは逆説的にいうと高学歴リベラルの人権擁護派が表では差別は問題だ!と声高に言うけど、裏では実は汚い言葉で差別されている人の悪口を言ってるなんて話は珍しくなく、実は人種差別問題の根深さはそちらの方だという意見もあります。

 

結局のところ、人種差別というのは意識の問題で、肌の色、民族の違い、言葉や習慣の違いが許せないから差別する事で優位に立ち、自分たちの方が優れていると思い込みたい行動なんでしょうけどね。でもそれは相手が気になって仕方ない。相手が何をしているのが注目してしまっている訳です。ムカつけばムカつくほど相手に注意を向ける。と同時に相手の言葉や文化を学んでしまっている。

 

まぁこれは極端な話ですけど、嫌よ嫌よも好きのうちなんて言葉がありますけど、それの上位版だと考えると面白いですけどね。で災い転じて本と成す。思わず一冊分ストーリーが出来てしまった。なんて話だったのでしょうか?

 

なによりこのリトル・トリーという本は著者の少年時代の話、ノンフィクションと謡って出版したそうですけど、結局それは後年にフィクション作品と切り替えられた経緯もあるようですし、そういった部分も含めて事実ではない部分も混じっているのは確かでしょう。ただそういった経緯を含めても、全く読む価値がない作品とは思わないですけどね。

 

以上、ちょっと雑感的に書いてみましたが、また何か書き足りない部分あれば追記で書くかも知れません。

 

 


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